幼児教育とグローバル基準の保育

幼児のファンタジーな世界と無限の可能性。小さな発見やフローの積み重ねからイノベーティブな未来を創る。有能感を持った自立した人間として、生涯を通して学び続ける資質を持って成長できるよう、今しかできない幼少期の土台作りを支援します。



食育と子ども

何でも意欲的に食べるようになると、それに比例するように手指もよく動くようになったり、集中持続力も伸びたりする子どもの姿があります。特に野菜をしっかり食べる子は風邪をあまり引かず、体力もある姿が目立ちます。集中持続力が伸び、気力と体力が充実すると、自分の好きなことに好きなだけ取り組めるようになり、様々な分野で達成感や自信を獲得できるようになります。それゆえに食育が幼児教育における毎日の基本であり、これを疎かにしてはどんな付加価値の高いことをしてもその効果は半減すると言っても言い過ぎではないと思っています。
子どもの食育を考える時、メニューや食材も大切ですが、調理法や調味料、雰囲気(楽しさ)などでも子どもの意欲や食べる量は随分と変わります。一人ひとり、色、匂い、固さ、大きさが少し違うだけで反応が違い、調理者、保育者、栄養士の日々のきめ細かい努力により、成果は大きく変わります。また、食べる時間にしっかりと空腹になっていることも重要であり、運動量が少なかったり、朝遅くまで寝ていたり、または遊びや活動で発散できなかったりしても食育は充実しません。食育を充実させようとすると周辺の環境を整えなければならず、生活全般を整えることにもつながります。
卒園児の中には調理の先生のことをよく覚えており、会いたいと言って訪れてくれる子もいます。調理した人間の顔が子ども達から見え、毎日言葉を交わし合うことも子どもの健全な成長を支えていると実感しております。

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遊びと「プロジェクト」

先月卒園した園児の保護者の方より「入学式の初日から隣の男の子とお友達になり、楽しそうにしていて安心しました」というお知らせをいただきました。頼もしい様子に先生たちも皆喜んでいました。

さて、毎日の外遊びで子ども達が“楽しそうに”交流している時、そこには必ず「プロジェクト」のようなものがあります。一人で夢中になって遊んでいる子に、二人、三人と集まってきて、新たなアイデアが加わります。ここで互いにメリットを見出せると晴れて“遊び相手(友達)”になります。ここでアイデアが出せなければ一緒に遊ぶ関係にはならなかったり、相手になっても受け身で動くだけの存在になったりします。

自分から楽しい遊びを作り出したり、アイデアを出せるようにするためには、2、3歳児の日常生活から始まっています。一人で真剣に何かに取り組んでいる姿は、二年後、三年後に友達に囲まれ、交流している姿へとつながっていきます。そのような姿をしている時には出来るだけ遮らず、また、そのような姿が事象として表れないのならばどのような環境を作れば表れるのか探し続け、それを必ず見出すことが保育者には必要です。
子どもの世界は子どもの世界なりにドライであり、友達が楽しい遊びをつくり出せないと感じた時には一緒に遊ばず、その友達は一人で遊びを作り出しながら友達の関心を待つか、その時はあきらめて先生と一緒に遊ぶしかありません。先生は子ども同士が上手に遊べるように仲立ちしたり、援助したりしますが、最後は自分の力です。子ども達の「遊び方」を見ていれば、誰も知り合いのいない小学校へ行っても、もしくは海外へ飛び出しても、大丈夫かどうかが分かります。それは将来大人になった時にも少なからずつながることと思います。



異年齢クラスと自律

異年齢クラスでは毎年4月になると、進級した年長や年中の子ども達の行動に変化が表れます。いつも憧れていた一つ年上の園児たちが使っていた道具や教材が遂に自分のものとなったこと、新たな学びの機会や責任を伴う役割が増えること、そして年下の園児たちが同じクラスルームに入ってきたことで相対的に感じる自分の成長など、これらによって進級の喜びは同年齢だけのクラスより大きいものと感じます。先生が特別な働きかけや注意をしなくても一ヶ月前とは違う自律的な行動が表れるのはとても興味深いことです。
“小さな子と一緒に生活することで大きくなった自分の成長に気づき、自信になる”ことは、サマースクールやウィンタースクールで遠くから来てくれる年長や年中の園児の保護者の方々からも時々言われ、異年齢クラスならではのことと感じます。一般的には小さな子が大きな子に優しくされたり、援助されたりする部分が異年齢クラスのメリットとして目立ちますが、それと同等以上に大きな子たちの自律やリーダーシップメンタリティを養うことに効果を発揮しています。昨日は小学生になった卒園児さんが「みんなに会いたい」と遊びに来てくれました。年長や年中の園児は小学生になった元クラスメイトがランドセルや鞄を背負って笑顔で明るく遊びに来ることで“自分も早く小学生になりたい”と期待を高め、心の準備にもなります。これも異年齢のクラスルームならではのことであり、開園時間が保育園型である特性も生かしながら卒園した子が15時以降に遊びに来てくれることを歓迎しています。
異年齢クラスで大切なことは能力的、技術的な課題を目的にした提示活動では一定の年齢や習熟度グループでしっかり分け、異年齢でいることがお互いに我慢し合うことにならないように注意をすることです。自由時間に対する配慮も同じであり、標準以上の職員の人数が必要と共に毎日毎日、職員間で話し合いながら一人ひとりが確実に成長目標に向かっているか確認し合い、月一度はすべての項目で到達度を評価しながら翌月の月間計画に反映させていきます。

海外では小学校からクラスメイトにどのような貢献ができるかを力として求めるところも多く、日本でも平成32年度から実施の大学入試改革では「教え合ったり、学び合ったりする力」も求められることとなりました。幼少期の生活体験を通じて“自分は他者に貢献できる存在”“自分は他者に必要な存在”という実感を身体感覚で持つことが将来への揺るぎない土台となることと思います。



好きなこと、夢中になれること

“お友達が沢山いるか”、“お友達と上手くやれているか”、幼少期の日本の子ども達には先生も親も常に“お友達”が中心になって人と関わる力への関心が示されます。
一方、子ども同士の関係性を連続的に見ていると、まず“好きなこと、夢中になれること”を自分で持てることが健全な友達関係をつくる上で大切であり、その前提条件がないとたとえ言葉が早くても対人関係で苦労するという考察が得られます。好きなこと、夢中になれることに取り組んでいる姿には、人(友達)は自然と集まってきます。逆にそれがないと、友達づくりではただ人に合わせることとなり、友達が出来ても依存している関係では心の中は常に不安定ということになってしまいます。(「自分の好きなことが分からない」というのは大学生や大人にも多く、教育のあり方と密接に関わっていると感じます)
好きなこと、夢中になれることを自分で見つけられる習慣がある子は、自分はどこに行っても友達を作れる(集まってくる)という自信を持っています。本当の意味での協調性を育てるためにも、好きなこと、夢中になれることをしっかりと自分で見つけ、持てるという土台を毎日の保育環境から幼児期の期間を通して作っていきます。
これについて、最も気をつけるべき年齢は「年少」でしょう。一般的に幼稚園3年制が主流になってから、保育園も含めて年少は年長や年中と同じレールの上に存在すると捉えられがちです。また、この時期は言葉の数も飛躍的に伸びることから集団への意識を高めようと誘導されやすいですが、まだ発達段階的には様々な葛藤を経験したり、目的が明確ではない集中活動を繰り返し体験したりする生活習慣が必要な時期です。分かりやすく例えると、年少はキンダーガルテン・エイジではなく、ナーサリーエイジの最終活動期と言えます。一方、「年長」や「年中」には習い事など教育機会の過剰選択という注意も必要になります。
幼児期の初期には一人遊びに集中できる環境を十分に整え、後期には好きなこと、夢中になれることを自分で伸ばしていける環境を整えることが、多くの仲間にも恵まれる資質を持つことにつながります。長い学校生活も後半に入ると、その後の長い社会生活を含めて自分自身の本当の力が試されます。好きなこと、夢中になれることを自分で見つけ、自分で自分を伸ばす力が備わっているかが本当に問われるのはその時でしょう。


巣立ちの日

2~4歳で土台となる太い根を張り、5歳前後で地上に出た芽を急がず、焦らず大切に伸ばすと、6歳前後で花が咲き始めます。どんな花が咲くのか、何色に、いくつの花が咲くのか、私たちの予想を常に超えるものであり、今年も沢山の喜びを持って「修了の会(卒園式)」を迎えることができました。

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アトリエでアートの先生のもとで描いた年長児の卒園制作。園へのプレゼントとして絵は私も当日初めて見させてもらいました。「鷲を描きたい!」と1ヶ月前に自分でアートの先生に言い、先生が図鑑でモチーフを用意しました。描いた鷲は空高く悠々と飛ぼうとする力強い姿でした。アートの先生は「短い時間でスラスラと描き上げ、相当強い思いを持っていたのでは」と。単なる偶然かもしれませんが、巣立ちの日に向けて自分の姿を重ね合せたのではとも感じる絵です。

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♪にじ ♪キラキラなど、少し難しい歌をみんなで歌った後、年少や年中の園児から卒園する年長の園児へ感謝の気持ちを込めて手作りのプレゼントを、年長の園児から園のみんな、お母さん、先生へ手紙やプレゼントが渡されました。製作の活動時には単なる儀式にならないよう、「感謝の心を込める」ことを何よりも大切にし、先生と今までの体験や思い出を一つひとつ話し合いながら相手のことを考え、想い、進めて来ました。式の当日はいつもと違う環境から戸惑っていた子も前日までは役割をしっかりと認識し、自分なりの表現で心を尽くしていました。

担任の先生たちからは、子ども達へ成長したことを喜ぶ言葉と保護者の皆さんへこの園を選び、信頼してくれたことへのお礼の言葉が涙を一生懸命こらえながら伝えられました。つい1年前まではみんなの前に立てばモジモジしていた年長さんも、最近はみんなの前で演奏したり、発表することも自信を持ってできるようになり、この日も長い言葉をみんなの前に立って話したり、長い歌詞の歌(♪さようならぼくたちのようちえん等)を覚えて歌ったり立派な姿を見せてくれました。

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体操の先生が「どうしても私用があって参加できずすみません」とお花を届けてくれまた。カエルちゃんがついているのは、さすが幼稚園教諭の資格もある体操の先生です(笑)。その他、アートの先生も顔を出してくれたり、補助や給食の先生も「出勤日ではないのですが参加してもいいですか」と来てくれました。

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卒園する年長の保護者さんが共に成長を喜び合い、進級される皆さんのためにもとお祝いのお花を用意してくれました。パンダちゃんが子ども達の心をときめかせました。式の終了後には担任の先生が「“(卒園する子のお母様から)この園を選択してよかったです”と言われました」と感慨深く喜んでいました。

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最後に園児たちの今年度後期の成長を、スライドを見てもらいながら説明しました。先生たちに子ども達が成長した点を年齢別グループでかき出してもらい、それに近い写真を探し出しました。多くの保護者の皆さんが集まるのは年に数回しかないのであれもこれもお伝えしたいのですが、一方で子ども達もいる中なので限られた時間でどう簡潔に伝えるか週末に悩みながら選別しました。
手作りの「ブラウニー」と「かき餅」は当日用事で東京にいない栄養士の先生が前日の夕方に作ってくれました。かき餅は大寒の時期についたお餅を平たくのばして干し、3週間岡山県の太陽のエネルギーを浴びた滋養もある自然材料による和菓子です。ブラウニーは年長さんのリクエスト「チョコレートケーキ」を汲んだもの、ホイップとカラースプレーは担任の先生たちのアイデアです。
最後に見てもらった年長さんの小さい頃(年少々)の写真には皆さんから「うわ~、かわいい~!」という、たった数年前なのに今とは全然違う姿に驚きの歓声も上がりました。


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年長さんから頂いた手紙。登山は100m→300m→600mと段階的に3回したのですが、どうやら100mの山が一番楽しかった思い出として残っているようです(笑)。簡単に登れてしまうので当初計画から削ろうと思いましたが、削らずによかったと思っています。子どもが何に喜びを感じ、何が明日への活力になるかは大人の予想とは案外違うことも多いものです。


「先生」はいずれ別れが来ることを知っているから毎日の一瞬一瞬を子どもと全力で頑張れるのかもしれません。「親」はそれが無限に続きます。「親」の苦労や心配と「先生」のそれとは比較することができませんが、互いに理解し合う努力をすることでより良い子どもの育ちにつながることと確信しています。
進級、進学にはまだあと2週間、更に大きくなる子ども達との一日一日が楽しみです。



author

橋井健司。保育士・研修指導講師。新教育デザイニング株式会社 代表取締役。社会福祉法人の監事。

著書
「世界基準の幼稚園~6歳までにリーダーシップは磨かれる」
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