幼児教育とグローバル基準の保育

幼児のファンタジーな世界と無限の可能性。小さな発見やフローの積み重ねからイノベーティブな未来を創る。有能感を持った自立した人間として、生涯を通して学び続ける資質を持って成長できるよう、今しかできない幼少期の土台作りを支援します。



伝統文化に親しむ「ひなまつり」

毎年、ひなまつりの日は子ども達がゆかた(甚平)を着て一日を楽しみます。朝から特に女の子たちは嬉しそうに模様や柄の話などをしながらお友達同士で見せ合ったり、お友達の保護者に見せたり、楽しそうでした。

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担任の先生が自分のひな人形を持参してくれました。ひなまつりの由来や「菱餅」、「桃の花」の意味なども子ども達に伝え、特に年長や年中とは対話をしながらお話を展開していきました。花瓶とお花はベテランの先生が用意して飾ってくれました。

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日本舞踊の師範でいらっしゃる水木歌蓮先生をお招きしました。子ども達がひなまつりの歌を唄う前で扇子を振りながら踊ってくれました。子ども達は静かに真剣な眼差しで鑑賞し、年長の子からは「もう一回観たいな~!」という声も自然に上がってきました。踊りの後は扇子を使っての見立てクイズを、今回先生が考えてきてくれました。「波」「桜」「傘」「太鼓」「笛」「化粧」などどれも日本の文化と関係があるものばかりですが、子ども達はお伽話の世界に入るようにとても楽しんでいました。

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日本舞踊の「立ち方」「座り方」「歩き方」もみんなで習って体験しました。予想以上に興味を示して楽しむ子が多く、みんなの前で行ってくれた4名はタオルを頭の上に乗せ、落ちないように挑戦しながら「立つ」「座る」をしました。「回を重ねるごとに上手になっていて、感心しました!」と先生の手記には書いてありました。

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給食は人参と絹さやでお花の形に飾った「ちらし寿司」と「白玉だんごのすまし汁」に和え物と付け野菜。みんなから「わ~すごい!」と大きな歓声が上がりました。おやつは栄養士の先生に道明寺粉と桜の葉を手配してもらった「桜もち」。幼児にも親しみやすい味に多くの子がおかわりをしていました。

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上段が年少と年少々が作った「ひな人形」、下段が年長と年中が作った「ひな人形」です。みんなで楽しい一日を過ごしました。



「体操」をする理由

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先週、体操の成果公開日を設けました。“成果公開”と言っても何か特別なことが出来た姿を披露するのではなく、日常行っている基本運動の目的や一人ひとりの成長を講師が保護者の皆さんにお伝えする機会と位置付けております。講師の先生にも説明の大切さをご理解いただき、保護者の皆さん一人ひとりに快く向かい合ってくれました。
私の園では外遊びを重視し、時間も長く取っている方ですが、それでも専門の先生が導く「体操」の時間は必須と感じています。手足の協応性や目の動きが運動能力に与える影響は大きなものであり、器用か不器用かではなく基礎をしっかりと援助すればどの子でもかなり上達します。運動が得意に見える子でもそれらが意外に整っていなかったり、逆に苦手に見える子でもその基本さえ押さえれば意欲も能力も格段に上がったりする姿を毎年見て来ると、幼児期には基礎的な身体能力を身に付けることこそ外見的な成果よりも重要だと感じます。また、幼児期における身体能力の発達は言語感覚や認知能力などの知育、豊かな情動や他人の感情に気づけるような身体感受性とも密接に関わっています。


体操以外の部分で嬉しかったのは、保護者の皆さんが来る前、体操の先生が来ると子ども達がいつものように裸足になって自ら脱いだ靴を揃え、自分たちで横一列に並び出したことです。子ども達は楽しいことが待っていると思えば自分たちで秩序を守ろうとします。
成果公開の様子は、見学をされた保護者の皆さんから事後にいただいたご感想のアンケートより抜粋して紹介したいと思います。講師や職員だけで共有するのは勿体なく、子育てをされている多くの親御さんに役立つご意見と思い掲載するまでです。(個人的な部分は省略をしています)


「皆さん、とても楽しそうに運動している姿を観て、体操の時間が好きなんだなと感じました。普段の外遊びでは出来ない運動ですし、手・足の力やバランス、腹筋など鍛えられる動きが入っていてよかったと思います。跳び箱の前に行った、かえるのような動きは大人でも難しい感じがしましたが、皆さん、手の位置、足の位置、手・足を順番にリズムよく動かしている姿を観て、頭で考えて体を動かすことが出来るんだな、と感心しました。」


「皆の楽しそうで『がんばろう!』という顔や、もう赤ちゃんではないんだなぁと感心するような能力にびっくりしました。」

「比較的短い時間にも関わらず、実に多様な体操の練習を見せて下さり、有難うございました。○○先生の丁寧な解説で一つ一つの動きにどんな意味があるのか理解でき、大変有意義でした。我が子のみならず他の園児さんにも温かい拍手を送ることのできる他の保護者様の姿にも感慨深いものがありました。」


「たくさん子ども達の良い表情を見ることができて、とても良い時間でした。楽しみながら体を動かしている様子を見て、子どもが家でもピョンピョン跳ねたり、飛んでみたりしている理由がわかった気がしました。」


特に嬉しかったのは、保護者の皆さんが自分のお子さんだけでなく、互いにお友達の成長をも笑顔で喜ぶ合う姿でした。とても印象的で、心を打たれました。



中国文化に親しむ 春節

近所づきあいとは本来好き嫌いでどうするか考えるものではなく、互いに持ちつ持たれつでどう気持ちよく過ごすかということだと思います。ならば、お互いに好きな部分をひとつでも多く感じた方がお互いのために良い・・・そんな思いもあって中国文化に触れることには他の国とはまた違う意味がある中、お父様が「中国」出身という園児がいることを後で知り、昨年の春ぐらいからどのタイミングで文化体験遊びの機会をお願いしようかと最適な機会を考えていました。

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「春節」という特別なお祝いの時期に合わせてお願いしたところ、上海から祖父母さんも来日してくれました。中国語しか話さないにも関わらず、笑顔と愛情ある接し方で子ども達は親近感を抱き、一緒にとても楽しい時間を過ごさせてもらいました。
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スクリーンではお父様とお母様が、中国の場所と大きさ、日本との距離、パンダや虎、春節のお祝い風景、屋外で食べる中国の朝食習慣、象形文字から漢字への変化等を写真や絵で紹介してくれ、子ども達からは「おー!」という歓声が何回も上がりました。

“自分の名前は中国ではどんなふうに呼ばれるか”を楽しんでもらうために、事前に園児一人ひとりの名前カードに中国語読みを振ってもらい、当日は一人ずつ名前を中国語で呼びながら渡しました。担任が提案したもので昨年のチュニジアの体験では一人ひとりの名前をアラビア語で書いてもらいました。
子ども達が好きなミッキーマウスやウルトラマン、キティちゃん、ドラえもんは“中国語では何と呼ぶか”も年長は特に関心を示していました。

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文化体験の機会には「食」を通じた体験を特に重視しています。五感を通じた体験は幼児の心や体にもしっかりと残り、いつまでも覚えています。今回は何としても“分厚い皮の主食としてのワンタン”を実現させたいと思い、市販されているものでは見つからなかったため休みの日にあたる栄養士先生にお願いして早朝から皮を手作りで用意する準備をしてもらいました。
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皮と具は餃子と同じにも関わらず、折り紙のように皮を美しい形で折る「上海ワンタン」には子どもたちだけでなく、先生たちもみんなが感動していました。祖父母さんが子ども達に得意げにその包み方(折り方)を教えてくれ、年長や年中さんは形をきれいに整えようと、年少や年少々さんも粘土のように握ったり、餃子のように作ったり、みんな本当に楽しそうでした。
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子ども達が作った主食としてもちもちの厚い皮に包まれたワンタン、春雨ときゅうり、トマト、わかめのサラダ、北海道のこしあんを入れた白玉粉と絹豆腐のごま団子をお昼にみんなで食べました。沢山の量にも関わらず子ども達はおかわりが進み、中国から来日しているご家族も「ハオツィ!」と何度も言ってくれました。

伝承遊び「老鷹捕小鳥(鷹が小鳥を狙う)」は男の子達を中心に盛り上がり、「もう一回やりたい!」というアンコールが何回も上がりました。お父さんやお爺ちゃんがタカの役をしながら、子ども達が先生の後ろで縦一列に小鳥役になって逃げると言うファンタジーのある遊びでした。

人間の温もりや営みを感じる状態で様々な国の文化に触れ、子ども達がやがて高校生や大学生になって自分で将来への夢を開いていく時、「小さい時の体験が役立ったかもしれない」と言われれば何にも代えがたい喜びです。ホスト側の子どもも大いに自信になったことと思います。自分が大人になった時に同じようなことをきっとしてくれるのではとそれも楽しみにしています。お世話になったご家族に心から感謝をしております。



音楽表現と幼児の姿

ジャン・ピアジェは、事物や事象のすべてを生命あるものとして捉える幼児の認知特性を「アニミズム」と定義しました。また、ファンタジーな世界観を幼少期教育の柱とするルドルフ・シュタイナーは「学校に来る生徒たちは無意識的な音楽家である」とまで言っております。音やリズムと共にある幼少期の身体表現はこのファンタジーな世界に棲んでいる子ども達の“実生活”そのものであり、“生の営み”とも捉えることができます。


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リトミックをしている時の子ども達はいつも笑顔が最高に素敵だと感じます。「音楽会」で行うイメージはないかもしれませんが、今年の音楽表現リサイタルではこれを一番に持ってきて子ども達が表現を楽しむ姿を保護者の皆さんに観てもらいました。親子で行える音楽遊びを入れたのも先生たちのアイデアで、子ども達の表情は本当に嬉しそうで和やかな空気に包まれました。年長と年中はやや教科的なド・ミ・ソの違いに反応する聴音遊びも行いました。


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子ども達が大好きな絵本から題材を選んだ「オペレッタ」は、今年はいつもの年度より人数的には年少が全体の中心になるため、内容をシンプルにしながら年長と年中の役割も全体の中で創るという例年とは逆の設定で先生たちが企画をしてスタートしました。それでも全体としてやや難しい環境設定だったかもしれません。子ども達は立派だったものの、厳密に考えれば身体を動かしながら暗記したセリフを発声し、更に物語の理解や役割分担の認識も本来必要とするので難しいものです。発達段階と照らし合わせると幼児で最適な年齢は6歳か5歳後半からが目安ではと反省的に実感することにもつながりました。
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音楽係の保護者の皆さんによる演奏は子ども達にとってとても嬉しいものでした。バイオリンやフルートの音色、タンバリンやトライアングルの心地よいリズムに浸りながら、みんな優しい眼差しで静かに聴いていました。お友達のママやパパは子ども達にとって愛着のある特別な大人であり、幼児たちにはプロの演奏を聴くよりも心に栄養を与えるものです。


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歌いたい子、集まれ!の設定で行った唱歌「ありのままで~アナと雪の女王より~」は、難しいオペレッタをこなした後だったせいか、やっと歌だけに集中できる時が来たからか、意欲的に前に出てきた子どもたちが思った以上に感性を爆発させてくれました。誰もが主人公の魂が乗り移ったとさえ感じる表情をしていました(笑)


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最後に年長さんがピアニカでベートーヴェンの「第九」を演奏してくれました。毎年年長の姿を見て想うのはみんなの前で堂々とできる本番も素敵ですが、練習している時の姿はもっと素敵だということです。“自分はやれば出来る”という安定した自信が過去の積み重ねから身についており、それを実感できるのは何より嬉しいことです。

明るく元気で個性的な子ども達、愛情に溢れた保護者の皆さんに感謝しながら担任の先生たちをしっかり援助し、全員が笑顔で進級・進学できるよう3学期の残りの一日一日を大切にして参りたいと思います。




ルソー 「消極教育」

フレーベルやマリアモンテッソーリを始めとする多くの幼児教育家の実践の背後にルソーの存在があります。ルソーは、子どもは大人の未完成ではなく、子どもとして固有の成長論理や世界を持っているという人間観を示しています。大人が子どもの将来を先取りして強制的に教え込もうとする積極教育を批判し、成長の論理に沿って援助をする『消極教育の原理』を教育において大切なことと示しました。

現実には「消極教育」という言葉は、その言葉だけがひとり歩きすると教育現場では誤解を与えやすいので私はあまり使わないようにしています。日本の幼児教育現場は行事という題目のもとで様々な強制的介入がありますが、一方で「自由」を理念にしながら適切な援助が与えられていない、海外の有名な思想だけを導入したような保育現場も問題があると思っています。

「消極教育」の原理については、私は『積極的提示と受身的援助の組み合わせ』と言った方が現場には分かりやすいと思い、感覚的には2:8もしくは1:9ぐらいですがそれを教諭や保育者の基本としています。ただし、その方法は子どもの年齢や習熟度によって違い、また、同じ子どもでも1学期と3学期は違います。大切なことはこの思想の原理を理解することよりも、子どもをよく観察し、そして観察するだけでなく発達段階の順序性が頭の中にしっかりと入っていることです。月1回は一人ひとりの発達段階を振り返り、計画を見直すことが大切と考えています。ルソーの「消極教育」を教育現場で形にするためには一人ひとりに違う提示や援助が必要であり、現場は消極どころか“忙しい”ものであります。



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年少々の表現活動。糊、クレパス、絵の具を使用。途中で止めた方が見栄えのよい作品になりますが、この年齢は“好きなだけ長い時間指を動かせること”を優先します。ルソーは「知識を与える前に、その道具である諸器官を完成させよ」と示しています。



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年少の表現活動。4歳から5歳になるにつれて自然に「作品」への意欲が芽生えます。3歳前後に自由な表現が許される環境の中で培った指先の洗練化や集中力がベースになっています。



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年中の表現活動。自分なりの作品表現を尊重しつつ、この年齢では「協働すること」も重視します。自分の苦手なことは友達に聞き、得意なことは友達にシェアするという学び方も身に付けていきます。その時は先生は援助を最小限にして少し距離を置き、消極的な存在になります。現在文部科学省で進められている大学入試改革の方向性を見ると、将来はこのような能力も求められることでしょう。



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author

橋井健司。保育士・研修指導講師。新教育デザイニング株式会社 代表取締役。社会福祉法人の監事。

著書
「世界基準の幼稚園~6歳までにリーダーシップは磨かれる」
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