幼児教育とグローバル基準の保育

幼児のファンタジーな世界と無限の可能性。小さな発見やフローの積み重ねからイノベーティブな未来を創る。有能感を持った自立した人間として、生涯を通して学び続ける資質を持って成長できるよう、今しかできない幼少期の土台作りを支援します。



異年齢教育環境という“グルーヴ”

異年齢合同で過ごすことのメリットのひとつに自分と向かい合うことができ、自分自身で課題調節がしやすくなる(メタ認知)という効果があります。子どもには習熟度や興味において必ず個人差やタイムラグがあり、同年齢集団だけでいると他人より遅いものがそれを意識してやがて苦手意識が芽生えてきて興味を失ったり、意欲を低下させたりする様子が見られます。一方、日常的に異年齢で過ごしているとそれが目立たないせいか他人と同じようにいかなくても自分なりに自分のペースで向上させ、意欲が下がらず、結果的にどの分野も苦手意識を持たないという様子が見られます。自分を肯定できるグルーヴ(溝)を子ども自身が異年齢という集団の中で見つけています。このあたりは保育方針による影響も大きなものですが、一方で本能的に“人より勝りたい”という気持ちは子どもでも誰にでも共通するものですのでそこを如何に上手く集団としてモチベーションが下がらないようにしていくかはクラスマネージメントの大事な点だと思います。

子どもには無限の可能性があると日々感じていますが、それは子ども自身が内発的に意欲を発揮できる環境があって初めて成されるものと感じます。異年齢環境には下の子が上の子から学ぶという単純な図式だけでなく、互いに補完し合いいつでも意欲が高く、挑戦的でいられるということも大きなものとして存在しています。
時々「異年齢環境のデメリットは?」と聞かれますが、それは運営面で発達段階をよく理解している教諭や保育士が配置されなければならないこと、全体を見られる人が必要なこと、及びある程度少人数環境でなければならないことと答えています。現在、一般的に異年齢と言えば社会性の向上を目的に行事の際の交流が主流ですが、これから何年後、何十年後かには授業などアクティビティの成果向上においても徐々に浸透していくことと思っています。



アート作品展

子ども達の光る個性と独創性が保護者の皆さんに見られる機会としてアート作品展を開催しました。子ども達には協働する本当の喜びも感じてもらいたいと思い、特に年長や年中は数週間かけての共同制作も実施しています。共同制作の喜びとは、みんなが少しずつ遠慮や我慢をして成し遂げるものではなく、一人ひとりが自分なりの表現を持ち合い、互いのアイデアに共感し合いながら集合体となることによって一人では生み出せない大きな価値を創ることにあります。自分なりの表現を発揮しながら共通の喜びや感動を得られるか、子ども達も、先生も一緒に試行錯誤しながらプロセスを大切にした活動を続けて参りました。
個人の作品では年長や年中はスパッタリングやステンシル、フロッタージュなど様々な表現技法を体験したものも展示しました。年長は釘と金槌を使っての木工作品も展示し、いずれも何を作りたいか、どんな表現をしたいか、子ども達の意思を大切にしながら担任や講師の先生たちが援助してきました。共同制作では立体で子ども達の身長より高い大きな人形を3週間かけて完成させました。制作の過程では話し合いによって新たな趣向や材料も加わり、創造活動では常に新しいアイデアが必要ということもよい経験になったことと思います。年少と年少々も紙粘土に自然素材や布、ボタンを組み合わせた立体の人形やデカルコマニーなどの絵画など、それぞれが自分なりの表現をすることを大切に、活動を楽しく重ねてきました。
保護者の皆さんには日頃から大切にしているプロセスも感じてもらえるよう、担任の先生たちが活動時における子ども達の努力の過程やその写真を作品と共にメイキングのような形で表現して展示しました。
作品づくりの過程では、先生たちは「ママにいいもの見せようね」等、外発的な動機づけで働きかける言葉は使わず、内発性だけを重視して子ども達に主体的な意欲が湧くよう導入のしかたや集中できる環境づくりなどで一人ひとり工夫をして援助をしてきました。
当日は多くの子がママやパパに共感してもらうことでとても嬉しそうな表情をしており、年長や年中の園児は自分の作品のストーリーを意欲的に説明している姿が目立ちました。午後にはアートの先生が来園し、年長さんが自主的に説明役を果たす中で年下の子たちも先生を取り囲んで自分の作品を嬉しそうに紹介していました。
保護者の皆さんも熱心に作品のひとつひとつを観て下さり、「みんな個性的」「想像力が凄い」「年長になるとあんなに出来るんですか」等、嬉しい言葉をたくさん頂戴しました。異年齢のクラスルームならではの年齢が上がるごとに表現力やその幅が発展的に広がっていく様子も伝わったようであれば嬉しく思います。

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スコットランド文化に親しむ

スコットランド出身の園児ご家族の協力により、今月の“セント・アンドリューズ・デイ”に合わせて子ども達がスコットランド文化に触れる機会を持ちました。前日に担任の先生がスコットランドと日本の国旗づくりを活動として提示し、当日はチェック柄の服がある子は着て来てもらいました。異文化体験の日はゲストが到着すると旗を振ってみんなで歓迎します。今回は、スコットランド人のお父様が有名なスカートのような民族衣装「キルト」と蝶ネクタイ、「スポーラン(ポシェットのようなもの)」を身につけて登場してくれました。「キルトは(日本の家紋のように)家ごとに色模様が代々伝わるもので好きな色を選べるのではないのです」ということには私達職員も今回初めて知りました。格調高い本物の素材感に子ども達もむやみに手で触ったりせず、「スカートみたい!」と言いながら興味津々でした。
まず、PCからプロジェクターでスクリーンに投影し、スコットランドの場所、気候、動物などを説明してくれました。年長と年中は前日のミーティングで質問してみたいことを話し合い、スコットランドは寒いのか暖かいのか、新幹線は走っているのか等子どもらしい興味が反映されていました。説明はお父様がすべて英語でお話し、続いてお母様が所々日本語に訳して進行しました。「エディンバラの城」は童話の世界にも出てきそうな光景で皆さんうっとりと観ていました。
続いて“Dance Time!”が盛り上がりました。”What’s the time, Mr. Wolf ?” と“Scottish Country Dancing”。手をとりあってのダンスは子ども達にとってはとても楽しいもので「もう一回!」というアンコールの声が何回もかかりました。What’s the time・・は日本の“だるまさんがころんだ”に似ており、数字を数えながら体を動かすゲームなので特にみなさん気に入ったようでした。
最後はいつも楽しみにしてくれる給食です。できるだけ本物に近く、でも出来るだけヘルシーに、幼児にとって「美味しい」という状態で出すことが基本なので毎回入念に打ち合わせをして進めます。今回もメニュー案を進行のご家族に提示してもらい、栄養士の先生と材料や組み合わせ、調理方法を調整しながら準備しました。押麦がたっぷり入ったスープの「スコッチブロス」はとろみがあって普段とは違う食感を楽しんでもらい、フィッシュ&チップスもパン粉を使ったフライではなく、お勧めに従って日本のてんぷらのように小麦粉をベースに片栗粉を混ぜて少しクラシックな感じで味わってもらいました。
子ども達は見て知識を得ただけではなく、体を使ってダンスを踊り、ゲームで動き、そして食事で味わい、五感をフルに使って異文化への興味を楽しみながら深めてくれたことと思います。語学で言葉を話せるようになっても、人と深く理解し合ったり、認め合ったりするには何より“違いに興味があり、親しめる”ことが大切ですので幼児期の体験は将来のために必ず役に立つことと思います。お世話になったご家族に心から感謝しております。
“世界のどこでも、誰とでも関係を築ける子に”・・・次は2月に中国文化に親しむ機会を“春節”に合わせて計画しています。こちらも園児のご家族に協力をお願いしており、とても楽しみです。

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599mへの道 登山パート3(高尾山)

年長が登山活動として最終回となる「高尾山」に行きました。1回目は標高約100m、2回目は300m、今回は600mです。これまでの体力や意欲を考慮した上で登りはケーブルカーを使わず、太い木の根っこや岩が階段状に重なる箇所が幾つもある最も険しいコースで頂上を目指しました。また、季節の自然体験も兼ねて紅葉が最も美しい時期を選び、それを一番多く感じられるコースとしても選択しました。
参加した園児はとても楽しみにしてくれていたようで行きの電車の中では登山マップを見ながら「次は富士山登りたい!」とも言いながら、盛り上がっていました。ただ、登り始めると今までとは違い、自分のひざを越えるような高さで石や根がいくつもいくつも続き、やっと辿り着いたと思った展望台は頂上までまだ半分の距離でした。この日は今年一番の寒さで太陽も出ていない天候でしたが、それでも「暑い!」と上着を脱いで果敢に登っていく園児の姿に、行き交うご高齢の登山者の方々からは「ねぇ、小学何年生なの?」と声をかけられる場面も何回かありました。
後半の1.5kmは徐々に体力も消耗し、休憩の間隔は短くなりましたが、それでも1分も座れば「もう出発する!」と早足で歩き出し、大人の回復能力との違いに私の方が置いて行かれそうになりました(笑)。
その後も登っても、登ってもまだまだ続く坂道に「まだ着かないね~」とため息も増えてきましたが、「じゃあ、途中でお弁当にしようか」と聞くと「いやだ、頂上で食べたい!」と登り続けました。前回の登山で味わった“頂上での味”が忘れられないようです。山々のきれいな紅葉も子どもの気持ちを励ましてくれるようです。
最後は途中で後ろにひっくり返りそうになる程の長く険しい階段が続きました。2時間弱を休憩4~5回で頂上に着いた時には最後まで力を振り絞った今までに見たことのない勇敢な表情をしていましたが、お弁当を食べると達成感に浸る間もなく「ケーブルカー乗りたい」「てんぐ見たい!」ともう次の目的に気持ちが向いていました・笑。下山の最中には「サル園」にも立ち寄ると、飼育員さんが猿社会のルールや生殖などをサル山の中からマイクを使って説明してくれる時間と偶々重なり、貴重な体験もできました。
往路の電車は朝のラッシュで半分以上立つことになるためそこで消耗する体力や集中力もある程度計算して登山に臨んでいますが、それでも今回は本当によく頑張りました。前回も今回も園児が前を歩き、もし途中で無理そうだったり、意欲が続かなければそこまでの努力を讃え、いつでも引き返すつもりでした。帰り道には「地獄のような階段だったよね~」「楽しかったけど本当に大変だったね~」と笑顔で振り返りながらも今までとは違う言葉が出てきました。苦しくても自ら最後までやり遂げる強い意志を持つようになった成長に感動もさせてもらいました。今回の成果はきっとこれから先に日常生活で出てくることと楽しみにしています。小学校へ向けて大きな自信にもなったことと思います。
登っている最中には来年、再来年登る子ども達の姿も頭に浮かびました。園に戻るとその子たちが輝かしい顔をして年長さんの帰りを待ちわび、取り囲んでいました。新たな歴史を作ってくれた年長さんと荷物や集合時間など準備にいろいろとご協力をいただいたご父兄、先生たちに心から感謝をしております。


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伝統文化に親しむ 「書道」

地域の教室で出かけて書道を行うことを子ども達が知ると、特にいつも年長や年中が社会活動に外出するのを羨ましそうに見ている年少の子たちは自分たちにも出番が来て大いに張り切っていました。教室に入って正座をし、先生から「一人ずつ名前を言って下さい」と言われると、年少は苗字を省いて名前だけだったり、名前の後にくんをつけたり可愛らしく(笑)、年長はしっかりとフルネームで「です」まで付けて言えました。

書道は字を書くことだけでなく、正座をして硯の上で墨を刷りながら匂いを感じるところから始めさせてもらいました。「墨の香は心を落ち着かせるアロマ効果もあり、昔の人はこうやって心を落ち着かせていたんです」というお話を先生から以前にお聞きしました。子ども達も普通に正座をし、筆を持っている時は背筋もピンと伸びて呼吸も落ち着いているので不思議です。絵の具の筆を持っている時とは全く違う感覚です。漢字の「一」「十」「三」などを(文字の認識がなくてもよしとして)手本に沿って書き、年齢によって自分なりの成果を感じながら、漢字の意味が分かっている年長は特に喜びを感じたようです。また、先生がひとりひとりの名前を色のついた墨で丁寧に書いてプレゼントしてくれたことも心がこもって嬉しかったようです。

後ほど先生から届けられた活動後記には「みなさん行儀がよく、日頃の保育生活がしっかりされていること素晴らしいですね」という言葉を頂きました。特別な行儀の練習はしていませんが、子ども達の意欲と好奇心の大きさがその場の空気を察知しながら行動する力を生み出していることと思います。種類や分野が違うひとつひとつ体験活動がしっかりと相互につながり、健全な成長を促していることを子ども達の行動から知ることができます。

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author

橋井健司。保育士・研修指導講師。新教育デザイニング株式会社 代表取締役。社会福祉法人の監事。

著書
「世界基準の幼稚園~6歳までにリーダーシップは磨かれる」
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