幼児教育とグローバル基準の保育

幼児のファンタジーな世界と無限の可能性。小さな発見やフローの積み重ねからイノベーティブな未来を創る。有能感を持った自立した人間として、生涯を通して学び続ける資質を持って成長できるよう、今しかできない幼少期の土台作りを支援します。



「運動会」をしない理由

園ではもうすぐ秋の親子スポーツピクニック会 “フェット・デュ・スポール” があります。マイクなし、BGMなしの環境の中、親子で運動遊びを楽しみながら、“競争”と“共創”に親しんで家族間の交流を楽しみます。9月に入ってからの屋外遊びでは環境設定の中に大道具を使ったり、直線や曲線を思い切り走れる工夫をしたり、援助や指導のあり方も環境の一部に含めて子ども達が自ら意欲的に環境に入れる工夫をしながら毎日を送っています。当日は何名かの卒園児の皆さんも参加してくれることになり、とても楽しみです。
以下は、園の保護者の皆さんにお渡ししたプリントから抜粋したものです。

なぜ「運動会」と違うの?

「運動会」での子どもの姿は確かに感動的ですが、その姿を見せるまでの過程には子どもよりも大人が主体となって形をきめ細かく指導し、自発的ではない受け身的な練習を続ける毎日があります。当園では子どもがどんな場面でも内発的動機づけで自分の興味を発展させ、自分で工夫する努力の積み重ねが楽しく、労苦ではないと感じる資質を持って幼児期を終えることを最も大切な目標にしています。運動能力面における成長や成果については、このF.D.S.ではなく、「発達における到達度レポート」および体操活動の公開日(年2回)にて、そこで説明させていただいております。

それで「協調性」や「競争心」は大丈夫なの?
遊戯や行進、整列でみんなに同じ動きを訓練することが「協調性」を高めることになるでしょうか。協調性とは他人の感情を自分に置き換え、自分と違う他人と共有、共存できる部分を繰り返し見つけようとする作業から生まれます。日本では教育関係者までも「協調性」と『同調性』の区別がついていないことが多い現状です。
「競争心」は煽らなくても誰もが持っている生存本能プログラムです。自分が積み重ねた実力もない段階で人に勝つことを褒められたり、喜ばれたりすれば常に自分より弱い相手を探すようになります。当園ではどんな場面でも“昨日までの自分に挑戦し、自分に勝つことが楽しい”と感じる「ラーニングゴール志向」を大切にしております(それが、結果的に多くの人に勝つということにもつながります)。将来大きな世界で競争する時のためにも評価の軸を他人との比較ではなく、自分自身に持てるようにしています。



愛情に包まれる子ども達

子ども達の自立に欠かせない「温もり」や「愛情」の正体とはどんなものでしょうか。毎年9月に敬老の日に合わせて祖父母の皆さんに来園していただく交流行事を楽しみにしております。園の中は“見返りを期待しない温もりや愛情”、そして“余白”によって和みの空間に包まれ、子ども達に安心とリラックスした幸せそうな笑顔が広がります。

今年も手や体を触れ合うゲームで園児と祖父母の皆さんとが和気合いあいと過ごし、おはじきやめんこ、ダルマ落し、お手玉、コマ等の昔の遊びも一緒に楽しんで盛り上がりました。また、ギターを披露してくれるお爺様やそろばんを持参してくれるお婆様もいて楽しませていただきました。昔の遊び道具には、日頃耳にしない独特の「音」があることも子ども達や先生が感じ、新鮮な発見になりました。また、ダルマ落しもコマ回しも、めんこも、おはじきもそれなりに身体の細部に瞬間的にかなりの力を入れたり、抜いたりしなければならず、どれも現代の子ども達が苦手とする手指の細かい動きと関係しているようにも感じました。


“見返りを期待しない愛情”や“余白”は、子ども達に勇気や強さも与えます。今回の行事でも、当日の朝になって「私の好きな歌をプレゼントしたい」と一人で歌う子が出たり、園を代表しての初めての挨拶を大きな声で言える子達が現れたり、年少の子達から新しい姿が見られました。また、年長児からも手作りのプレゼントを一人ひとりへメッセージを変えて作りたいという要望が事前にあり、当日渡してもらいました。

見返りを期待しない愛情を与えるということは親の立場では難しく、出来なくて当然のことであり、保育の専門職でも余程の経験を積まないとこの域には達しないと思います。私の周りにも職員や講師を含めて60代や70代の先生たちがおりますが、大変学ぶことが多く、憧れの気持ちも抱きながら勉強させてもらっています。保育理念を実現する上でもこの世代の方々の協力は欠かせないと感じています。

いつまでも元気に過ごされ、子ども達を温かく見守りながら、経験から自然と出る手本を私たちにお示しいただければと思います。それが自然と子ども達に「敬老」の意識へとつながり、これからの超高齢化社会を生き抜くヒントにもなれば尚嬉しく思います。

 



日本の伝統食クッキング 「味噌」

9月5日に栄養士の先生の指導で本格的な味噌作りを行いました。朝から大豆のにおいが部屋に充満しました。先生が前日に大豆を水に戻し、当日は早朝からゆでてくれました。園児の皆さんは①大豆をつぶす ②(手で)塩と米麹を混ぜる ③大豆と②を(手で)混ぜあわせる ④(手で)お団子をつくり容器(甕)に投げ入れる ⑤ペーパーを敷き、塩をパラパラとふる ⑥おもしをのせる ⑦蓋をして冷暗所に保存する とすべての工程を体験しました。味噌作りは五感(色・音・におい・手触り・味)の発達を促すと共に手の動きを腕から指先まで力を入れながら器用に動かさなければいけないので手指の運動技術の発達や集中力の向上にも役に立つものと思います。また、伝統食のクッキングはそれを体験することで日本の文化や長い年月をかけて作られた価値観なども受け入れることになるので吸収力著しい幼少期には最適なものと感じます。

クッキングの最後に飲んだ大豆の茹で汁にも独特の香りがありましたが、ほとんどの子が飲み干していました。先生から「味噌汁として食べるのは一年後です」という説明があると、子ども達は進級した自分や一年生になった凛々しい自分を想像しているようでした。美味しいものを作るには時間がかかるということも体験を通して感じてくれたことと思います。味噌汁の味は大人になってからも結構覚えているもので自分のルーツやアイデンティティの意識とも案外関わりがあるので家庭でも大事にしてもらえれば嬉しく思います。

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以下は、栄養士先生の指導手記です。

「子どもはハンバーグや団子など、手でこねる物が大好きです。今回の味噌作りも大豆をつぶし、手でこねて、丸めて瓶に入れる作業をします。長時間かかって漬け込んだ発酵食品は蛋白質、ビタミンBとE、カルシウムが多く、吸収が良く、肝臓の働きを助けるものです。子ども達と1年後を楽しみにしたいと思います。

時間があれば(既にしているご家庭もあると思いますが)、ご自宅でお子様といっしょに台所に立ってみてはいかがでしょうか。キャベツ、レタスを手でちぎること、豆をさやから出すことから、ピーラーや型抜きなど安全で楽しいものをお勧めします。そして、それがどんな結果になっても「ありがとう」と伝えることを忘れずに・・・」

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夏季期間(サマースクール)を終えて

夏の間は季節の特性を考えて通常のような集まりや巧緻性を誘導するようなカリキュラムは避け、わくわくドキドキする体験型活動や異年齢合同での学び合いや取り組みが促進されるような活動を担任の先生たちに企画してもらい、講師の先生たちとも共有しました。

今年は多くの子たちが外からもサマースクールとして参加してくれて、楽しく賑やかな毎日でした。印象的だったのは最初の1週間ぐらいは誰もが絵画の時間になると、実物を実物でしか表現しなかったり、周囲を見て誰かの真似をしようとしたりしていたことでした。1人や2人ではなくほとんどのお子さんがそのようにされ、子ども同士で絵画のモチーフを前に「ないもの描いちゃだめだよ~」と小声で注意をし合っている姿を見た時には、何としても“自分の心象をありのままに表現することが素晴らしい”という肯定感だけはせめて感じさせて返してあげたいという強い思いが込み上げてきました。講師や担任の先生たちも同じことを感じていました。
短期間なので限度はあると思いましたが、それでも幼児の柔軟性は凄いと感じるほど、2週間、3週間と過ごすうちに見る見るその絵は変わり、幼児らしい心象が個人差はあっても誰からも出るようになりました。その短期間での変化には職員みんなが驚き、幼児のもつ柔軟性を改めて学ぶことにもなりました。

異年齢でのコラボレーションも自由時間や生活の中で盛んに見られました。最初は、沢山の大きな子たちが来て年下の子たちは戸惑ってしまったり、初めて来た年上の子達には年下の子と接する時に“なんで譲らなきゃいけないの”と心で感じているような姿もありましたが、次第に年上の子たちは年下から尊敬の言葉をかけられることで配慮ができるようになり、年下の子たちは年上が行うことの姿に未来の自分を重ね合わせる等、変化が出てきました。「ぼく(わたし)も○○組になったら○○したい!(していい?)」という、来年や再来年の自分をイメージする言葉が毎日出て来ました。

これも嬉しいことでした。通っている教室で逆上がりができなくなってしまったという子が、「ここでなら出来る気がする!鉄棒を出して欲しい!」と言ってきました。プール期間中は室内用の鉄棒は奥にあり、出し入れが困難なので普通に遊びたいぐらいならまた今度にしてもらうのですが、その切羽詰まった表情から何とかして上げなければと思い、用意しました。
「場所」が意欲に与える影響について興味深いのは、アタッチメント(愛着)理論や脳科学においても拠り所や出発点等として関連付けられてよく取り上げられることです。毎週空手教室に行く子が道着への着替えは頑なに園でしてから行きたいという姿もそれに似ており、私達としては嬉しいものです。余談ですが、心の準備として毎回必ず自分が落ち着ける場所で自分が決めたことをするのはイチロー選手など有名なスポーツ選手や企業経営者に多いと聞きます。幼児期からその感覚が分かり、自分で自分にスイッチを入れるためにどこで何をすればよいか感じられることは良いことだと思います。

今週からいよいよ2学期、実りの「秋」が始まりました。夏の期間は私達にとっても日頃の保育をふり返り、反省し、改めて子どもを信じることの大切さや一人ひとりに適切な援助を考える貴重な時間となりました。夏の間にひとまわり大きくなった子ども達にまた新しい気持ちで会える毎日が楽しみです。




化学実験で「ゲル」をつくろう

*サイエンス活動における講師の先生の手記をそのまま掲載します。

<本日の実験概要と子どもたちの様子>
先生が子どもたちに見せたのは、本物そっくりのイクラの軍艦巻き。「あ!イクラだ!」「私も作りたい!」と早速食いつく子どもたち。
「プラスチックビーカー」に入った水に、「塩化カルシウム」という特別な薬を溶かして自分たちで試薬を作りました。
「白いカルピスみたい!」「全部溶かせた!」「溶けたら透明になった!」など、先生にたくさんの「わかった!」を投げかける子どもたち。
自分で試薬を作る体験を通して、「溶ける」という概念を体験していただけたと思います。

次は人工いくらの素を準備します。「アルギン酸ナトリウム」水溶液に、赤・黄・青の絵の具で自分の好きな色を付けました。

いよいよ、人工いくら作り。「アルギン酸ナトリウム」の水溶液を「スポイト」で吸い取り、一滴ずつ「塩化カルシウム水溶液」の中に落とします。
塩化カルシウム水溶液の中に落とした瞬間に丸いイクラの形ができるという変化は子供たちの心をわしづかみ。
「うわぁ!!すごい!!」と、歓声をあげながら、真剣に集中して取り組んでいました。
子どもの集中力はすごいですね。

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初めて使うスポイトも、何度か試すうちに、とても上手に使うことができるようになりました。

自分で作った様々な形の人工いくら。「おうちの人に見せる!」ということだったので、「絶対に蓋をあけない」、というお約束をしっかりして、自分だけのいくらを容器に入れて持ち帰ることになりました。

#お持ち帰りいただいたものは、誤飲や目に入ったりすることのないよう管理いただき、観察後は、液体は流しなどで多量の流水と一緒に流し、固形物は燃えるごみと一緒に廃棄をお願いいたします。

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【講師略歴】 柳田真樹子
東京大学大学院(工学部)修了。大手メーカーにて環境装置の設計開発に従事している中で、子どもの教育に体験型授業が必要であることを実感。
教育ベンチャー(株)ウィル・シードにて、全国の小中学校を対象にした特別授業(トレーディングゲーム授業)の運営や講師を務める。
その後、(株)ベネッセコーポレーションにて、小学生向けのサイエンス教室の立ち上げ・プログラム制作・講師育成に従事し、独立。
現在「こどもみらい工房」代表。民間学童などで科学実験教室や算数実験教室のプログラムを提供している。





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橋井健司。保育士・研修指導講師。新教育デザイニング株式会社 代表取締役。社会福祉法人の監事。

著書
「世界基準の幼稚園~6歳までにリーダーシップは磨かれる」
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