幼児教育とグローバル基準の保育

幼児のファンタジーな世界と無限の可能性。小さな発見やフローの積み重ねからイノベーティブな未来を創る。有能感を持った自立した人間として、生涯を通して学び続ける資質を持って成長できるよう、今しかできない幼少期の土台作りを支援します。



伝統文化に親しむ「日本舞踊」

日本舞踊の水木歌蓮先生と先生の教室に弟子として通う小学生の卒園児に来園してもらいました。園児たちも朝から浴衣や甚平で登園をし、お盆休み明けの保育室は色鮮やかに飾られました。
小2のお姉さんと日本舞踊の先生が園児たちの前で正座をすると、先ほどまで何人かの園児が走り回っていた室内は自然と厳かな空気に包まれ、気が付けば全員が正座をして静かにお辞儀をしていました。小2の子が立派な姿で舞う「うさぎ団子」を尊敬と親しみの眼差しをしながら鑑賞をすると、自分たちもやってみたいという気が園児たちに起こり始めました。先生が振り付けの説明をすると真剣な表情で真似をし、三味線の音楽に合わせて踊った時には初めてにも関わらず、かなり出来ている子が何人かおりましたので先生も驚いたようです。日本舞踊の「座り方」「立ち方」「歩き方」の提示にもみんな笑顔を見せながら意欲的に取り組んでいました。特に頭にタオルを乗せて落ちないようにまっすぐ歩く「歩き方」は、園児たちが大変楽しんでいました。年長の子は昨年のことをよく覚えており、始めから正確に出来ていたことにも驚きました。
最も嬉しかったことは、「うさぎ団子」の振り付けを園児たちが先生の指導から学ぼうとしている時のことです。多くの園児たちがただ受け身で模倣しようとしているのではなく、“うさぎが餅をつく姿”や“うさぎが踊る姿”を自分なりに想像して心に入れてから再現しようとしていました。毎朝の歌でも一人ひとりのイメージを大切に隣の子とは違う身振り手振りを尊重しながらみんなで同じ曲を歌ったり、リトミックで自分らしく動物の模倣をしたりする積み重ねや習慣が、伝統文化を前にしても自分の感性で再現しようとする姿につながったことと嬉しく思います。また、小さな子たちにとって同じ環境で育った卒園児の存在は大きなものであり、たとえ同じ時期を過ごしていない子ども同士でも親しみを感じ合えることには大変興味深く感じます。
“日本の伝統文化に触れる心地よさ”や“日本文化が培ってきた豊かな感性”を心や身体で少しでも感じて自分のものにしてくれれば嬉しく思います。卒園児さんも踊りを終えると緊張がほぐれて昔の顔に戻り、年下の子たちに似顔絵をプレゼントしたり、折り紙を折ってくれたり、有意義な時間となりました。



情動を身体で表現する「ボディペインティング」

からだ全部(全身)を使って表現する楽しさを感じることは、幼児期に是非しておきたい体験です。「ボディペインティング」は絵の具を全身に塗り、床一面に大きく敷いた紙の上で“人間スタンプ”になったり、からだに塗ること自体を楽しんで“変身した気分”になったりする等、自由に感性を爆発させる活動ですが、少人数教育環境だから時間を十分に与えて自由度を広げられるということも背景にあります。
また、この活動は日頃の保育方針が一人ひとりに浸透しているかどうかバロメーターの役割も果たしています。全身を使って表現することを、秩序を保ちつつ十分に楽しみ、それを友達と同じ空間でやり取りできるというのは、それほど簡単なことではなく毎日の積み重ねが必要です。「汚したくない!」というような前頭葉からの抑制指示が、「楽しそう!」と感じる心(内臓感覚)の情動に勝る子が日本では多いという印象がありますが、情動をありのままに表現しながら必要なところだけ自らブレーキをかけて他者と楽しみを共有するという快適さを習慣的に覚えると、頭と身体が自然に調和できるようになってきます。むしろ幼児期の後期になるにつれて更に器用になって発展します。これは幼児教育において大変重要なことのひとつだと思っています。最近では、脳科学においても知性が情動をコントロールしているのではなく、情動が知性を支えているという見解があり、生命科学においても大脳が情動を支配することは系統発生的にないという意見があります。
少し話が深くなってしまいましたが、子ども達の生き生きとした表情、感性を爆発させた表情を見られるのはとても幸せに感じます。終わった後の床掃除やボディソープで一人ひとりの体を洗うのは職員にとって重労働ですが、皆やりがいを感じてくれています。嬉しいことに今年は年長や年中の子たちが雑巾がけを行っていると、年少の子たちも自主的に手伝ってくれました。

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食育は人と人の心から

いつの年度も毎朝子ども達から「今日の給食は何~?」という元気な声が調理の先生に向かって投げられています。私の園は小さな園で保育室から調理室が見え、調理する先生は子ども達が遊んでいる時も活動をしたりしている時もずっとご飯を作っているので、その手間暇かけている様子は自然と伝わっており、誰からも親しまれております。子どもにとっての“アットホーム”という雰囲気も調理の先生が不可欠な存在となっており、卒園した子たちが遊びに来た時にも調理の先生には保育の先生に対してとはまた違う親しみのある笑顔を見せており、嬉しく思います。

食育は何を食べるかも大切ですが、それと同じぐらい「人」が心を込めて作り、それについて言葉を交わし合うことも子どもの成長(特に幼児期)には重要だと思います。先日、子ども達の食事中に調理室でパイナップルを切っている調理の先生を見た子が「ねぇ、みんな、○○先生見てごらん、凄く大変そうだよ、可愛そう」と言い、子ども達みんなが注目をしました。子ども達はこういう体験を通じて「まだ?早くして!」「遅い!」と言うことを自然と言わなくなるのだろうと思いました。現代の生活環境では家庭で時間をかけて調理する姿を毎日見せることは中々難しいと思いますので、こういうところにも教育援助としての役割があると思いました。毎日の食事を人と人をつなぐ「心」の成長の機会としても大切にしていきたいと思います。

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幼児のサイエンス「からだの内側の探検」

毎年、保護者さんの中で医師をされている親御さんにお願いし、子ども達が興味を持っている“からだの内側を探検する”機会を持たせてもらっています。今年は、年少の園児のお父さん、お母さんがお二人でお医者さんの白衣を着て、子どもたちの前でからだの中のことについて図鑑や絵本を手にしながらお話をしてくれたり、聴診器を持参して子ども達が自分や友達、先生の心臓の音を聞き合えるようにしてくれました。

いくつか持参いただいた聴診器で子ども達が“ドックン”“ドキドキ”という音が聞こえたと確認し合う中、年長児から「僕は“スースー”って聞こえた!」と違う意見が上がり、先生が場所(心臓・肺・腹)によって違う音がすることを丁寧に説明してくれました。そうなると、子ども達の好奇心はみるみる広がり、年少の子たちまで含めて「お尻は(聴診器あてても)音がしない!」「足はする?」「頭は音がするの?」等、次々と展開されていきました。聴診器で自分や友達の心臓の音を毎年聞かせてもらっておりますが、場所によって音が違うことまでみんなで発見できたのは初めてでしたので驚きました。年長の子が人と違う自分だけの意見を堂々と言ってくれたことで参加している全員の興味レベルが上がり、発想も広がりました。人と異なる意見を堂々と言える雰囲気作りの大切さを改めて感じました。

子ども達から先生への質問では「なぜ人間には骨があるのか」「なぜうんちはでるのか」「なぜ男の人は赤ちゃんを産めないのか」「なぜ人間は足があるか」等、大変興味深いものばかりでした。毎年、赤ちゃんの誕生に関した質問が出るのも興味深く思います。先生はとても分かりやすく、ゆっくりと丁寧に答えてくれました。

6月に行った「歯について学ぶ」体験活動では、子ども達はそれをきっかけに見通しが持てるようになったためか、今でも虫歯になりたくないという意欲を強く維持できるようになったり、自主的に歯磨きをしたりする姿が増えました。単にお医者さんではなく、“友達のお父さん、お母さん”がそれをしてくれたというのも子どもにはかなり影響力があったと思います。体験はそのもの自体も素晴らしい価値を持ちますが、その後の日常生活や保育活動をどのように意識して展開していくかで子ども達の思考力や想像性の広がりは全く違いますので今日の機会も明日以降のあり方を大切にしながら、子ども達からどんな発想や興味の発展が出てくるか楽しみにしたいと思います。

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豪快に遊ぶ「水遊び」

数年前、手洗い場(室内)で水遊びをしては注意され、それでもしてしまう子たちを見て“堂々と出来る場を保障してあげよう”と、自由に思い切り水遊びができる場として、プールとは違う子どもの楽しみを(教育課程の中の)活動として取り入れることにしました。

「動」の時間に活発に遊ぶ子ほど、「静」の時間(机の上の学習や集まりの時間)に姿勢正しく話を聞き、集中力も持続します。子どもが子どもらしく、思いきり遊べる場を保障することでメリハリのある一日が創られます。

今年も園児たちは洋服をビショビショにしながら、全身で水遊びを楽しみ、遊んでいる最中は生き生きとした表情をしていました。園に戻ってからは全員で着替えを行い、脱いだ服を自分で積極的に管理しようとする成長した姿も見られました。夏は開放的な体験を積み重ねて豊かな感性を育んでもらいたいと思います。

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橋井健司。保育士・研修指導講師。新教育デザイニング株式会社 代表取締役。社会福祉法人の監事。

著書
「世界基準の幼稚園~6歳までにリーダーシップは磨かれる」
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