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幼児に内発的動機を尊重する環境を整えると、持続的に集中状態を保とうとする「フロー」と呼ばれる姿が早かれ遅かれほとんどの子に現れます。それを繰り返すごとに意欲や自信のステージは上がり、様々なことに主体的に関わりながらその対象が変化していきます。この過程は「フローの階段を登る」とも言われており、個性の芽の出始めや他人と円滑な関係を育んでいくための情緒の安定とも深くつながっています。

フロー理論は、ハンガリーの心理学者であるチクセントミハイ氏が提唱する発達の概念ですが、マリアモンテッソーリはその名称が付けられるかなり前に子どもの様子の驚くべき変化からその体験の重要性に着目して観察を続け、自身の教育法の柱に据えました。“集中状態に入っている時は絶対に止めてはならない”というのはなぜか、フローとはどんなメカニズムか、フロー体験を習慣化するとどうなるのか、しないとどうなるのか、マリアモンテッソーリら幼児教育や発達心理における先駆者による考察を引用する形で以下にまとめました。


フローとは?
子どもがひとつのことに夢中になって、我を忘れて、何かに取り組んでいる状態。フロー(没入を伴う集中状態)に入ると周りの声や音も聞こえないぐらい集中する。

フローのメカニズム
内発的動機から生まれる没入感覚。強制されることなく、自由な状態でこみ上げてくる自身の欲求に従った行動。押し付けられたもの等、動機が外発的である場合には「フロー」には入れない。フロー体験を重ねるには自分で課題を見つけ、調節できる習慣や力が必要。

フローの特長
ある特定の事柄に対して、ある特定の時期(臨界期または敏感期といわれる)に現れる。一つの目的が無事に果たされるとその感受性は消え、また別の事柄へと感受性が移っていく。


フロー経験を重ねた子の様子
・自発性が芽生え、「やればできる」という自信と忍耐心が表れる。
・運動器官(特に手や指先)の差が、器用さに表れ、身のこなしがよくなる。
・観察力や注意力が増し、より高い技能が身についてくる。
・情緒が安定し、他人への思いやり、協調性が表れる。
・規律と秩序を重んじ、従順さが養われる。


フローを経験しない子の症状
・動きが激しく、怒りっぽく、独占所有欲や嫉妬深さに表れる。
・手の動きをうまく統制できないため、落としたり、壊したりすることがよくある。
・弱い子どもや動物に対して残酷な仕打ちをする。
・無感動、無気力、表情が乏しい。
・依存心がつよく、怖がりで、暗闇を極端に嫌う。嘘をつく。


フロー経験を重ねた子の将来
・短い期間で高い集中力と発展性を発揮し、新しい知識や技能を身につける。
・自分で目標をつくり、他者比較や評価に依存しないで動機づけられる人間になる。
・自己肯定感が高く、他人を思いやり、全体に対する配慮ができる人間になる。


日本の幼稚園や保育園の現場では「おしまいで~す」「もう時間です」と一斉に終わらせることが多く、もちろん、そうしなければならない時も当然ありますが、それがあまりに多かったり、いつも子どもが集中しているタイミングで遮ったりしていれば、それは“逸脱発達”(上記「フローを経験しない子の症状」)を引き起こす原因にもなるということを関係者は肝に銘じて欲しいと思います。子どもに“集中力がない”“協調性がない”という状態をつくっているのは、もしかしたら無自覚的に作っている環境のせいかもしれません。
スケジュールの組み方に無理がないか、集中している子だけ5分や10分の時間を与え、次の行動の開始が遅れて何か問題があるか、毎日多忙な中でもできることはあると信じて常に環境を振り返りたいものです。

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