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昨年、幼児期後期にいる子ども達の語彙をどのように広げていくかを考えていた際、もうひとつ別の悩みが職員にありました。それは、おもちゃを持ってきてはいけないという規則があるにも関わらず、子ども達がお家から(保護者も知らぬ間に)お気に入りのものをかばんに忍ばせては友達に自慢し合うという毎年ある可愛いらしいことですが、それで子ども同士のトラブルになったり、紛失して大騒ぎになったりするのは保育者を困らせるものでもありました。一方、平均保育時間が8時間を越え、家庭で過ごす時間が短い子ども達に“絶対におもちゃを持ってきてはいけない”と厳しくするのも可愛そうではという気持ちもあり、保育者自身がやや緩くしているということも背景にはあります。

そんな姿を見て、私が年長年中グループに提案したのは以前から興味を持っていた米国で有名なshow & tell(家から好きなものを持参してスピーチをする)でした。当番になった時だけ自分の好きなおもちゃや大切にしているもの等、友達に見せたいものを(洋服や電子機器なども含めてとにかく)何でもひとつ持ってきてよいことにし、それについてお話をするという設定です。持参したものは自由時間にみんなで遊ぶことを許可すればそれでお友達とも一緒に遊べるというおまけ付きです。このあたりのルール化も米国で実践されている方法を参考にしました。子ども達は何日も前から自分の当番の日をわくわく楽しみにしながら持っていくものを考えています。そして、みんなの前でお話をしなければそのおもちゃでは遊べないというルールもついているため、みんなスピーチにも一生懸命になっています。

さて、本題の「語彙力」の部分です。子ども達が自分で描いた絵について又は体験したことをスピーチするという設定は今までも行ってきました。ただ、この場合は形式的になりやすく、モチベーションという部分であまり上がらないことも少なくありません。「わたしはきのう○○をしました。楽しかったです」と大きな声で言って「上手!」と褒められるだけでは幼児教室と同じぐらいしか成果はありません。生き生きとした表情で、自分の内側から出て来る言葉を探しながら堂々と話せるようにすることこそ幼児期にすべき本質的なことだと思います。しかしながら、そんな環境設定が毎回しかもすべての子に受け入れられる形をどのように作ればよいのか、中々考えが進みませんでした。いくら上手に話せても予め記憶したセリフをたどっているようなものでは意味がなく、子ども自身が心の底から「伝えたい」と思えるところから言葉につなげる環境が必要でした。そんな時に本質的な価値を感じ、改めて辿り着いたのが「ショウ・アンド・テル」の形態でした。

「ショウ・アンド・テル」を始めるに際して、意外と忘れがちなのは“聞く側のレベル”です。話すという行為は、聞いてくれる人がいて初めて成立しますが、子どもも大人と同じように話す内容が聞く側のレベルに左右されます。また、話す側も集団の場で「見せたい」「自慢したい」等そもそもの強い意欲がなければ、「伝えたい」という気持ちが起こりません。この企画自体は主に年長を中心にしながら年中も含めた活動ですが、その前段階の準備は年少やそれ以前の日常生活とも直結しております。絵画や造形など表現する楽しさを知り、想像力が豊かであればより多くの言葉も引き出される可能性があります。言葉が早い子の方がスピーチでは有利ということは決してありません。


次回は子ども達の様子と変化について書きたいと思います。開始して2ヵ月がたち、私としては全体の半分も観ていませんが、それでも職員から聞いた話を含めてたくさんの驚きや感動がありました。最初の回で80秒間沈黙していた子が次の回でどうしたか、人前に立つのが一番苦手な子がどんな行動をしてくれたか等、日々いろいろなドラマがあります。次回はそのようなことを中心にご紹介させていただきます。