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本格的な登山体験

世間が運動会の練習に励み、特に年長は大人を感動させるための最高峰としての役割にいそしんでいる中、私たちの園の年長児たちは待ちに待った登山に行ってきました。職員からも「毎年、この体験を機に変わる子が多い」と言われる2回目の登山は、300mですが崖を横に見ながら安全策のない細長い道も続く、自然探検として絶好の場です。今年の年長さんたちもトレッキングシューズを履いて移動中も大張り切りでした。一方、今回の登山では自然の怖さも感じる体験がありました。

雨が異常に長く続いたせいか、当日の異常な高温多湿のせいか、歩いているとヒルが次々と足元から上半身まで登ってきて、払っても払ってもまた新しいヒルが登ってきました。山頂へつくと、何人かの子どもと職員の服が赤くなっており、調べてみると痛みがほとんどないにも関わらず、ヒルが服の中に侵入し、“吸血”していて血がスルスルと流れていました。
ごくごく小さな噛み穴にも関わらず、少量の血が止まらないのは職員みなが初めて直面することであり、その場で調べてみると、ヒルの吸血行動には「血液の凝固作用を阻害し、止血まで2時間ぐらいかかる。ただし、失血を心配することはない。」ということが分かりました。毎年歓喜にわく山頂でのお弁当タイムは、止血作業をしながら食べるという過去になり光景となりました。それでも子ども達は「あ~おいしい!」とマイペースでゆっくり食べ尽くしていました。(ヒルは血を吸わない限り産卵できない生態らしく、なぜ命をかけてしがみついてくるか理由が下山後に分かりました)


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山頂から大声で叫ぼう!

止血が終わり、お弁当も終わって少し雰囲気を変えようと思い、山頂で「お立ち台から絶叫大会」を始めました。人が誰もいないことをいいことに、好き勝手なことを言います。実は昨年もしましたが、この時だけは年に一度だけ「バカヤロー」とか「う〇ち」など日頃注意する言葉もなんでも大声で叫んでいいことにして盛り上がります。日頃絶対できないことであり、次回の観光地化された登山では人も多く全くするチャンスはありません。
子ども達はノリノリです。中でも嬉しいのは、毎年みんな「ママ、お弁当美味しかったよー!(作ってくれてありがとう!)」と叫んでいることです。そして山頂から街の景色を見下ろしながら本当に聞こえたかな?と思っていることです。
最後はアニメの曲を歌いながらみんなでダンス大会になりました。(運動会の練習をさせられているような子どもの姿よりも、歌もダンスもみんな上手に揃っています。笑)。これもこの登山のひとつのイベントになりそうです。

子どもに使ってほしくない言葉は禁止することだけを教えても本質的な気づきにはつながりません。なぜなら、大人も使っていたり、また子どもの前で使っていなくても心の中で思っていることを子どもは見抜いているからです。使ってほしくない言葉は吐き出す場があった方が、気づきや自律につながります。ちなみに絶叫での「バカヤロー」も人に対していう子はいません。あくまで言葉そのものに対して楽しんでいるだけですのでご心配なさらないで下さい。

体力と精神の成長
子ども達はペースが速く、休憩もあまり必要としないで先を目指すので下山後のバスや電車ではグッタリすると思っていたもののそれは職員の方で、ほとんどの子は「疲れた」と言いながらも最後まで友達との会話を楽しみながら元気に園に戻ってきました。下山時、凸凹の高低差もある中、ずっとしりとりをしながら下る子ども達の姿にも驚きました。
帰りの電車は混んでいたので子ども達は空いた席から順に座りました。同じ年長同士でありながら、(自分も疲れているにも関わらず)自分より疲れていそうな子には先に席を譲る姿もありました。自分に余裕があるとき、または自分の能力が勝っているような事柄には(先生にいわれなくても)自ら積極的にシェアしようする気持ちが育っていることを最近の年長児たちから感じることが増え、嬉しく思っています。海外の小中学校ではこのような態度が非常に評価され、進学時の査定にも関わります。


危機管理の強化
“ロープや救急道具の持参(万が一の転落等に備えて)”、“バスの中では背中をつけてダランとさせない(酔い防止)”、“職員もできるだけ座らせる”等々あらゆることを想定し、ヒル対策も「塩」を持参して知識も入れておりましたが、“ヒルの侵入や吸血に(自分が)気づかない”ということまでは事前に想像がつかず、どのマニュアルにもないものでした。
そんな時に役立ったのはスマートフォンと情報探しへの「勘」でした。1分ぐらいで適切な情報を引き出すにはみんなで調べても普段から調べ慣れていないと中々必要な情報のありかに辿り着けません。対策は事前の準備を万全に期すことを第一としながらも、いざという時に適切な情報にあり付ける訓練も日頃から大切だと実感しました。
(ヒルについては大量発生が予想されるような今回のような環境条件であれば、次からは当日晴れていても「中止」にすることと思います。一方、同日に通常保育もしながらの登山計画は職員配置の点から一ヶ月前からしなければならないので、それを天候に応じてどこまで臨機応変にできるかも考えなければと思いました)

年長さんによる報告会(翌日)
翌日、年長さんには年中さんと年少さんの前で登山体験のお話してもらいました。友達と一緒に話したいか、一人で話したいか、希望をとって発表してもらいました。全員が笑顔でニコニコしながら自分の言葉で楽しかったこと、驚いたことなどを頭の中に思い出しながら話し、聞いている園児からも笑い声が多い発表会となりました。みんなヒルのことを最初に話しながら、“雨乞いの龍が出て来た”という言い伝えのある池のことを話す子や帰り道に温泉があって入りたかったと話す子、お寺でお線香の煙を頭にかけたことを印象深く話す子など、見たこと、聞いたこと、触ったことを生き生きとお話してくれました。山頂で叫んだことも椅子の上に乗って一人ずつ再現して叫んでもらいました。

昨日は体操の先生も一緒に登山への引率者として同行してもらいました。下山した時に「これで、フェット・デュ・スポール(当園のスポーツ会)は絶対大丈夫だね!」と子ども達に言った言葉が印象的でした。運動会の練習では得られない「本物の団結力」がついたことと、次の活動や最終回となる3回目の登山を楽しみにしたいと思います。