土曜日に「食育」をテーマとした、給食の試食を兼ねた保護者懇談会を開催しました。

私の園は食育の内容に興味をもって選ばれる方も多く、今では認可保育園から栄養士研修の依頼もくるようになりましたが、ここまで来るには担当職員個人の力量だけでなく、改善と調整の継続やその判断による様々な困難な過程がありました。
 
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年前、採用させてもらった栄養士の職員は偶々、自然食研究家でした。私は元々「医食同源」ということに興味があって何冊か本を読んで勉強したことがあり、また、現代の小中学生や大人における「ストレスへの不耐性」や「心と体の成長のアンバランス」、「感情コントロールの出来なさ」などは食生活とも深い関係があるのではと思っていたため、その職員にそれまで使っていた学校給食(認可保育園)ベースの献立をすべて作り直してくれないかお願いをしました。
 
しかし、献立を自然食ベースに新しくすると、最初のうちは「シンプルすぎる」「肉が少なすぎるのでは」「コクがなくて味がつまらないのでは」「もっと噛み応えがほしい」等、予想していなかった意見が職員から次々と出、そこからの改善と調整が非常に大変でした。これは保育や教育全般にもいえることですが、たとえ保護者の理解や支持があっても、子どもの様子や感覚を代弁するのは職員なのでそこを上手にまとめない限り、本末転倒となってしまいます。また、小さな違和感を放置しておくと、特に女性同士は人間関係にも影響します。
 
幸い、担当の栄養士の職員が柔軟な性格でいろいろな反対意見や提案も受け入れてくれる方だったので、修正に修正を重ねることができ、学校給食とは全然違いながらも自然食やマクロビのような一つの主義にこだわったものとも違う、洋や中の要素も入るオリジナルな献立になりました。同僚の職員や保育の職員の貢献も大きなものです。
 
一方、最も困難な壁は学校給食法の「摂取基準」を守るか、守らないかの判断にありました。著書「世界基準の幼稚園」では、コラム4「本当は難しい、和食中心のメニュー」にて掲載されていますが、和食メニューにするとどんなに量を増やしても、たんぱく質(動物性)とカロリーの数値でこの基準を満たすことができません。
 
いくら認可外で運営しているとはいえ、基準を守らないという決定をすることには覚悟がいりました。しかし、それも栄養士の職員と相談し、また、自然食や玄米食を出している園は必ずしも数値を遵守していないということも本などを通じて知り、摂取基準は参考にはするものの絶対条件としないという判断を最後には自信を持ってすることができました。独りよがりにならないよう情報開示や試食会も継続的に行ってきました。
 
そして、2013年、「和食」はユネスコの無形文化遺産に登録されました。これは、これまでのような寿司や天ぷらが有名になって評価されたものとは全く違い、“Traditional Dietary Culture”として“自然の恵みを敬う精神”“持続可能な自然資源の活用”“世代を越えて人と人をつなぐ価値”など日本の伝統的な習慣や文化的価値が評価されたものです。農水省のホームページでも、海外の人向けには“Washoku, Traditional Dietary Culture”という言葉をもって紹介されています。私の園でも海外生まれや海外在住の子がこれまで様々な国から来て同じ給食を食べていますが概ね喜んでくれています。


こうした世界の評価があるにも関わらず、国内では食糧事情が悪い時代につくられた「摂取基準」によって、子どもたちの学校給食に反映されにくいという現状は不思議なものです。

 

<食育懇談・給食試食会のメニュー>

・三分搗き米
・米粉でつくる夏野菜カレー(バター不使用)

・車麩のフライ(チーズ風味)、

・いわしの骨まで丸ごと梅煮(圧力鍋使用)

・シンプルな野菜サラダ(じゃ芋、人参、アスパラ、コーン)

ドレッシング(酢、油、塩、砂糖)

・一年醸造と六年醸造の合わせ味噌汁(野菜4種+油揚げ)

・自家製ふりかけ(削り節、しょうゆ、ごま、みりん)

・ぎょうざの皮ピザ(赤ピーマン、しらす、玉ねぎ、チーズ)

・味噌クラッカー