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後編は、編集の都合で大幅に省略された部分の著書の原文をもとに掲載します。以下は3年前に書いたものです。(少し加筆しました)

" 日本の子育て現場では「おかたづけ」を異常なほど重視する傾向が目立ちます。確かにきれいにすれば気持ちがよいですし、国際的にはワールドカップで日本人の観覧者が試合終了後にスタジアムのゴミ拾いをしていることが模範的な態度として評価される等、この習慣がもたらすよい側面もあります。

しかし、重大な問題があります。せっかく集中している時に「おかたづけ!」という声を一日に何度もかけられて集中を妨げられれば、内発性や集中力というものがどんどん弱くなってしまいます。遊びは深めていかないと自信につながらず、自分の新たな能力の獲得にも至らず、達成感も得ることはできません。私の園でも偶に他の園から遊びに来てくれる子や転園してきたりする子は、「お片付けしよう」と声をかけられた途端に遊びをやめ、テキパキ片づけようとすることが多く、日頃どんな環境にいるのかなと心配になったりもします。それは、よいしつけを受けているというより、よい調教を受けているというような姿に重なります。

片付けは個人のペースで個々にできるようにすることを目標とすべきで、一斉に声掛けするような機会はなるべく減らしたほうがよいと思います。そして、ひとつの遊びに十分な時間をとること、あと5分もしくは10分あればもっと深められる時に片づけの時間がきた時は職員間で配置を修正しながら、待ってあげることも大切にしています。なぜなら、内発性という意欲の原点が将来にとって大人の皆さんが感じている以上に非常に重要だからです。

日本人の子ども時代はまるで軍隊のように一斉に気持ちや行動を切り替えることを優先されてきましたが、未だにそれが慣習として健在です。しかし、それは現代社会では最優先事項ではありません。子どもが片付けするのが大変だからと、遊び道具を少しずつしか出さなくなったりしたら、幼児教育的・人格形成期としては重大な損失を受けているともいえる姿です。

片づけや整理整頓への感性は生まれながらの男の子と女の子にも脳の働き方に違いがあると思います。女の子は大して教えなくてもまだ3歳未満というのに自主的に服をたたもうとしたり、くつを丁寧にしまったりしようとする姿もよく見かけます。一方、男の子はやればできるのに片づけには全然興味が湧かないという姿も多いものです。本来の才能や感性を潰さないためには、このような違いを理解することも大切です。

大変興味深いのは、部屋が少し散らかっている時、子どもは生き生きとしながら種類の違う関係ない遊び道具や玩具を自分の想像力でつなぎ合わせ、新しい空間や概念をつくってしまうことです。例えば、ブロックと木工知育玩具、トランプやオセロ、手作りのものなど全く違う遊び道具を組み合わせ、自分たちで新たな空間と遊びを作り出すようなことをします。

早くから行儀をしつけられたりする子や片付けを徹底させられているような子にこのような想像力は育まれません。ソニー創業者の井深大さんも著書「0歳からの母親作戦」の中で“適度に散らかった部屋の方が子どもの知的好奇心や探究心が伸びる”と言っており、正にその通りだと実感します。つまり、大人から見える“散らかっている”は、子どもには“散らかっていない”のです。空地に積んであるようなガラクタも子ども達には宝の山なのです。屋外だけでなく、室内も同じです。

それでも、片づけをしっかりさせたいという場合は、“片付けそのものを遊びにしてしまう”ことです。片付けが嫌いな男の子にはむしろ難しく分別して完成したらパズルを組み立てた時のような達成感があるようにする等の方が上手くいきます。"